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アルベール・カミュの小説『ペスト』に描かれた状況と、5月18日の新聞記事。


今日5月18日(月)の琉球新報1面。北部地区の医療格差に関する記事です。北部地区医師会会長のコメント「装具も医療従事者も絶対的に足りない。だからと言って『もうやめた』なんてできるわけがない」を読んで、今売れている小説のことを紹介したいと思いました。

アルベール・カミュの『ペスト』と言う小説です。
出版されたのは1947年なので、今から70年以上前です。舞台は北アフリカ、アルジェリアの港町(当時アルジェリアはフランスの植民地でした)。街中に鼠の死骸が溢れたことをきっかけに、奇妙な熱病が流行し始めます。

主人公の医師、ベルナール・リウーは症状からその熱病がペストであることに気が付きます。しかし、それがペストであるとすると、街を封鎖(いまで言うロックダウン)しなければならない。経済に対する影響ははかりしれない。当然、その地域の行政関係者や医師会の幹部はペストであることを認めるのに戸惑いを感じるわけです(我が国の首相が「緊急事態宣言」をなかなか出さなかったのに重なります)。

行政が手をこまねいているうちに、死者の数が増加。街がロックダウンされることに。市民生活はめちゃくちゃな状態に陥るわけです。

「ある朝一人の男がペストの兆候を示し、そして病の錯乱状態のなかで戸外に飛びだし、いきなり出会った一人の女にとびかかり、おれはペストにかかったとわめきながらその女を抱きしめた、というようなうわさがつたわっていた」
「あるカフェが、『純良な酒は黴菌を殺す』と言うビラを掲げたので、アルコールは伝染病を予防するという、そうでなくても自然な考え方が、一般の意見のなかで強まってきた」
「投機がその間に介入して来て、通常の市場には欠乏している第一級の必需品などがまるで作り話みたいな値で売られていた」

これらは、『ペスト』の中の記述ですが、2020年のニュースになった出来事とそっくりなのに驚かされます。人間は70年間、変わっていないということでしょうか。

酷い状況の中で、主人公の医師たちは自暴自棄にならない。医師リウーは、「今度のことは、ヒロイズムなどという問題じゃないんです。これは誠実さの問題なんです。こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが、しかしペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。…僕の場合には、つまり自分の職務を果たすことだと心得ています」と述べます。

『もうやめた』なんてできるわけがない、と感じている北部地区の医療従事者。今朝の朝刊を読んだとき、医師リウーの言葉のことが思い起されました。







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